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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)10481号 判決

原告

ジヨセフ・ギリス・ジユニア

被告

篠宮昭

ほか一名

主文

一  被告らは各自原告に対し、金四〇万〇、二八八円およびこれに対する昭和五二年一一月一三日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告の、その余を被告らの各負担とする。

四  この判決は、一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者双方の申立

一  原告

1  被告らは各自原告に対し、金二、五〇〇万五、六七三円およびこれに対する昭和五二年一一月一三日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告らの負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二当事者双方の主張

一  原告の請求原因

1  原告は、左記交通事故により、後記のように受傷した。

(一) 事故発生日時 昭和五一年五月一六日午前一一時五〇分

(二) 事故発生場所 東京都立川市若葉町一丁目一一番一〇号先路上

(三) 加害車 自家用普通乗用自動車(多摩五六む三八八号以下、加害車という。)

(四) 右運転者 被告篠宮正和(以下、被告正和という。)

(五) 右保有者 被告篠宮昭(以下、被告昭という。)

(六) 被害車 自家用普通乗用自動車(多摩三三E二九〇五号・以下、被害車という。)

(七) 事故態様 原告は、前記日時・場所において、被害車を運転中、被害車より六―七台先を走行中の車両が右折を試みて停止したため、それ以後の被害車の先行車が順次一時停止し、被害車も停止したところ、被告正和は、加害車を時速四〇キロメートル以上の速度で走行させながら、着衣に付着していたほこりを取り払うなどしていたため、被害車の停止に気付かず、そのままの速度で被害車に追突したものである。

2  原告は、右追突事故の結果、その胸部を被害車のハンドルに強く打ちつけられ、胸部打撲、脳震盪、むち打ち症となり、昭和五一年五月一七日福生市所在の米国空軍横田基地U・S病院(以下、U・S病院という。)で加療し、同月二〇日から東京都杉並区所在の東京衛生病院に転院して加療を行ない、昭和五二年四月一四日まで同病院に通院して加療したが、今なお、胸部の疼痛は治癒していない。

3  ところで、原告は、本件事故前である昭和五〇年一二月八日、母国アメリカにおいて心臓における冠状動脈の手術を受け、昭和五一年五月一四日、医師より疾患治癒と認定されて軽労働の許可を受け、同年六月一日から従前勤務していたアーミー・アンド・エアホース・エクスチエンジサービス・パシフイツクジヤパン(以下、エイフエスという。)に職場復帰することになつていたものであるが、本件事故による胸部打撲のため、右手術の際に胸骨とその付近に止められていた胸骨を縫合するための四つの金属製クリツプのうち一つが胸中で損壊・変形し、胸骨が前方に強く曲つてしまい、常時神経を刺激するので、その痛みに悩まされ続け、再手術も不可能な永久労働不能者となつてしまつたものである。

4  原告は、本件事故により次のような損害を被つたものである。

(一) 逸失利益金一、五九六七万七、六一七円

(1) 原告は、本件事故に遭遇しなければ、前記のように、昭和五一年六月一日からエイフエスで稼働することが可能であり、ここから年収六、六七六ドル四〇セント(金一五一万五、八七六円・ただし、一ドルを金二二七・〇五円で計算)の給付を受けることになつていたが、本件事故により無収入となつた。ところで、原告は、本件事故当時、満五三歳の男子であり、少なくとも向後一四年間の稼働が可能であり、右期間中の損害につき、ライプニツツ式計算方法により中間利息を控除して計算すると、金一、五〇〇万五、〇五〇円(1,515,876円×9.8986=15,005,050円)となる。

(2) また、原告は、エイフエスに昭和五〇年一〇月一八日から勤務して船積フオークリフトのオペレイターをしていたものであるが、エイフエスに五か年間勤続した場合、満六五歳に達した後、終生(米国男子の同年における平均寿命は七一歳である。)後記年金を受けられることになつていたけれども、本件事故によりその受給資格を喪失した。なお、原告の一四年後に受ける給与は、年五パーセントの定期昇給(物価上昇による昇給を考慮しない。)を見込むと、年俸は八、〇〇〇ドルに達する。そして、この年俸に基づき年金基準により原告の受けられる一か年の年金は、一、五〇〇ドルとなるので、この損害につき、ライプニツツ式計算方法により中間利息を控除して計算すると、金九六万二、五六七円となる。

(二) 慰藉料金八五四万二、〇〇〇円

原告は、本件事故のため、前記のなおり通院加療を余儀なくされ、この間計り知れない精神的苦痛を受けたが、その損害は少なくとも金七〇万二、〇〇〇円を下らない。また、原告は、本件事故により、胸部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができず、後遺障害別等級表の第三級に該当する後遺障害を残したが、その損害は金七八四万円をもつて相当とすべきである。

(三) 治療費金九万二、〇〇〇円

原告は、本件事故による受傷のため、前記各病院で通院治療を受けざるを得なくなり、昭和五一年五月二〇日から同五二年六月一五日までの治療費として金九万二、〇〇〇円を支払つた。

(四) 通院費金三、九二〇円

原告は、右通院に要する費用として金三、九二〇円を支払つた。

(五) 弁護士費用金一五〇万円

原告は、本件事故の事件処理を原告代理人五三雅彌に委託し、同代理人に対し、昭和五二年八月二七日着手金五〇万円を支払い、かつ、報酬として訴額の一割を支払うことを約した。右のうち、少なくとも金一五〇万円が本件事故による損害である。

5  原告は、本件損害の内金として、被告の加入する保険会社より金一〇九万九、八六四円の支払いを受けた。

6  よつて、原告は被告らに対し、本件損害額合計金二、六一〇万五、五三七円から右金一〇九万九、八六四円を控除した残金二、五〇〇万五、六七三円およびこれに対する本訴状送達日の翌日である昭和五二年一一月一三日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の各自支払いを求めるため本訴請求に及んだものである。

二  被告らの答弁と主張

1  答弁

(一) 請求原因1の事実中、(七)の加害車が時速四〇キロメートル以上の速度で走行していたことは否認するが、その余の(一)ないし(七)の事実はいずれも認める。被告正和は、本件事故現場手前三〇メートルの地点にある横断歩道を通過する際、加害者の速度を減じたので、本件衝突時におけるその速度は時速二〇ないし三〇キロメートルであつた。同2の事実中、原告が、本件追突事故の結果、胸部打撲、脳震盪、むち打ちの傷害を受け、U・S病院および東京衛生病院で各通院加療を受けたことは認めるが、その余の事実は否認する。同3の事実中、原告が、昭和五〇年一二月八日アメリカで心臓冠状動脈の手術を受け、胸骨を縫合するため、胸骨とその付近を金属製クリツプで止めていたことは認めるが、その余の事実は否認する。同4の事実はすべて否認する。同5の事実は認める。

(二) 仮に、原告主張の後遺症の各病状が認められるとしても、これは、原告が昭和五〇年一二月八日受療した冠状動脈の手術に基づくもので、本件事故との間には相当因果関係が存在しない。すなわち、原告は、本件事故の結果、前記傷害を受けたが、いずれも二~三週間で治癒する程度のものであり、原告主張の胸痛は、すでに一〇年位以前から存在し、右のとおり心臓冠状動脈の手術を行ない、昭和五一年二月、日本に帰り引き続き療養していたもので同年六月一日から復職する予定でいたものの、なお胸骨を縫合するため銅線クリツプで止めているなど治療が継続していたもので、決して右疾患が治癒していたわけではない。原告主張の後遺症状は、右の経過に起因するもので、本件事故との間に相当因果関係を認めることはできない。

2  主張

被告らは、請求原因5記載の金一〇九万九、八六四円のほか、その契約にかかる保険金によつて金四万八、〇六〇円(総額金一一四万七、九二四円・内訳は治療費金四万四、一〇〇円、昭和五一年六月一日から同年一二月一五日までの休業損害金一一〇万三、八二四円である。)を支払つた。

三  原告の認否

被告らの右主張事実は認める。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  交通事故の発生

請求原因1(七)の事実中、加害車が時速四〇キロメートル以上の速度で走行していたとの点を除く同1(一)ないし(七)の事実はいずれも当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第六号証の一ないし三、第七ないし第一七号証および原告本人尋問(第一、第二回)の結果によると、被告正和は、原告主張の日時ごろ、加害車を運転し、その主張の場所を国分寺方面から砂川九番方面に向けて時速約四〇キロメートルで進行中、前方を同方向に進行していた被害車を認めたが、このような場合、自動車運転手として、被害車の動静に注意し、安全を確認しながら加害車を運転すべき注意義務があつたにもかかわらずこれを怠り、うつむいて着衣に付いていたほこりを取り払うなどしながら加害車を運転した過失により、被害車がその前車に引続いて停止したのを約九・四五メートルの距離に至つて初めて発見し、あわてて急制動の措置を講じたものの及ばず被害車に追突したものであることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

そうすると、被告正和は民法七〇九条、被告昭は自動車損害賠償保障法(以下、自賠法という。)三条本文により、各自、原告が本件事故で被つた後記損害を賠償すべき義務がある。

二  原告の傷害の部位・程度等

原告が本件事故により胸部打撲・脳震盪・むち打ちの各傷害を受け、U・S病院および東京衛生病院で各通院治療を受けたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一ないし第四号証、第一八ないし第二〇、第二五、第二六号証の各一、二、乙第一、第二号証の各一、二、第九四、第九八ないし第一〇〇、第一〇三号証、第一〇五号証の一ないし六、第一〇六号証、原告本人尋問(第二回)の結果により真正に成立したものと認められる甲第二一号証の一、二、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第九ないし第一一、第一三ないし第三三号証の各一、二、第三四ないし第六六号証、第六七、第六八号証の各一、二、第六九ないし第九三号証、証人住田雅文の証言により真正に成立したものと認められる乙第九五ないし第九七、第一〇四号証、その方式と趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一〇七号証、証人住田雅文の証言、証人兼鑑定人乾道夫、同丹羽信善の各証言および鑑定の結果ならびに原告本人尋問(第一、第二回)の結果を総合すると、次の事実が認められ、これを左右するに足る証拠はない。

1  原告は、本件事故後、胸部、頭部、頸部の痛みを感じたので、右事故日の翌日である昭和五一年五月一七日U・S病院に行つて治療を受け、同月二〇日東京衛生病院に転院し、同日から昭和五二年四月一四日まで同病院に通院して治療(実治療日数一五日)を受けたこと。

2  ところで、原告は、本件事故前、約一四年間狭心症を伴なう動脈硬化性心疾患に悩まされ、そのため、屡々激しい胸部痛に苦しめられていたが、昭和五〇年一二月八日、米国サクラメントのサツター・コミユニテイ病院で、冠状動脈(四か月)のバイパス手術を受け、その際、胸骨を縫合するため、胸骨とその付近に金属製クリツプ四箇がはめられた(ただし、原告が、同日米国で心臓冠状動脈の手術を受け、胸骨を縫合するため、胸骨とその付近を金属製クリツプで止められていたことは当事者間に争いがない。)こと、一般的に、冠状動脈の手術を受けた患者は、右手術が成功したとしても、すでに、心臓自体が心筋梗塞の発作などを起して侵されており、または、冠状動脈そのものが動脈硬化などの病変を起しているので、健康な通常人に比し、日常生活面等で相当な制限を受けざるを得ない状況のもとにあること、そして、原告も、本件事故以前から原告の治療に当つていたドーリン医師より、「彼は、右手術によつて、非常に改善されたが、完全な活動力を取り戻すこと、あるいは、一日中働くことは不可能である。そのため、彼に永続的な完全な安静が与えられるべきであると勧告された。しかし、激しくないパートタイムの仕事は可能であろう。」と診断されており、本件事故以前から、日常生活面はもとよりのこと、経済活動面でもかなりの制約下におかれていたものであること

3  原告は、前記手術後も、右疾患が完治したわけではなく、胸部がしめつけられるような一種の胸部圧迫感等を有していたため、継続して治療を受けていたところ、右手術後約五か月後に本件事故に遭遇したものであること、原告は、本件事故による衝撃により、胸部を被害車のハンドルに押しつけられ、その結果、胸部にはめこまれていた前記金属性クリツプ四箇のうち最下部にあるそれが若干ねじれたような状態になつてしまつたこと、原告は、本件事故後胸部痛を訴えるようになつたが、その後東京衛生病院で治療を受けるようになつてからも、医師よも、治療剤として、右事故以前より投与を受けていたのと同種の薬であるジゴキシン(強心利尿作用のある薬)の投与を受けていたこと、同病院で原告の治療を担当したウエーバー医師は、昭和五二年一月一二日現在の原告の症状につき、「原告には、自覚症状として、胸痛、頭痛、頸部疼痛があつたが、頭部、頸椎の症状は改善され、胸痛は、現在も治療中であるけれども、良くもならなければ悪くもならない。原告の右症状は同日固定した。レントゲン写真では、頭部に異常所見はなく、頸椎は骨折はないが小突起あり、胸部には術後の金属品がある。」旨の診断をしていること、そして、原告は、現在、収入を得るため、英語の家庭教師として働いているが、日常生活上、医師より、特に重い物を持たないようにと言われているほかは、格別の指示を受けていないこと。

4  本件事故当時、原告とともに被害車に同乗(助手席)していた原告の妻桜井友子は、右事故により頸椎捻挫の傷害を受けたが、これについては、平田整形外科医院の医師によつて、昭和五一年六月一四日をもつて治癒した旨の判断が示されていること。

以上認定にかかる本件事故の態様、程度、右事故前後における原告の症状、治療の経緯および生活状況等に照らすと、原告の訴えている胸部痛は、前記冠状動脈手術後に残留していた症状と本件事故による衝撃とが競合して発生したものというべく、損害の公平な分担の原則に鑑みて、本件結果全体に対する右事故の寄与率は五〇パーセントと認めるのが相当である。

三  原告の被つた損害

1  逸失利益

(一)  労働能力喪失による逸失利益金七五万〇、二五二円

原告は、昭和五一年五月一四日、医師より軽労働の許可を受け、同年六月一日から従前勤務していたエイフエスに復職し、エイフエスから年収金一五一万五、八七六円の給付を受けることになつていたところ、本件事故によりエイフエスに勤務することができなくなつたため、無収入となり、向後エイフエスに一四年間勤務した場合における得べかりし利益を喪失したので、その損害の賠償を求める旨主張するが、なるほど、前掲各証拠によれば、原告は、その主張のころ、医師より、特に職場を特定することなく軽労働に従事してもよい旨の許可を受け、同年六月一日から従前勤務していたエイフエスに復職する予定をたてていたことが認められる。しかし、本件全証拠を検討するも、そのころ、原告とエイフエスとの間で、エイフエスが同年六月一日から原告を就労させる旨の確約が取りかわされていたことを認めるに足る証拠はないばかりでなく、却つて、前掲各証拠によると、原告がエイフエスに就労できなかつたのは、本件事故によるものではなく、これとは関係のない別個なエイフエス側の事情、すなわち、当時、エイフエスには原告にとつてふさわしい軽労働の仕事がなかつたことによるものであることが明らかである。してみると、本件事故によりエイフエスに就労し得なかつたことを前提とする原告の右主張は、理由なきものとして、これを採用することができない。

しかしながら、後記のとおり、原告には本件事故による労働能力の一部喪失が認められるから、右喪失そのものを損害として把握し、これによる原告の得べかりし利益を算出するのが相当であると判断する。そこで検討するに、原告の前記胸部痛は、本件事故の前記寄与度等を参酌して考えると、自賠法施行令別表の第一四級第一〇号所定の後遺障害に該当するものというべきところ、前掲各証拠および昭和三二年七月二日労働基準監督局長通達(基発第五五一号)別表「労働能力喪失率表」ならびに弁論の全趣旨を総合すれば、原告は、本件事故前、原告主張にかかる前記年収金一五一万五、八七六円(年収六、六七六ドル四〇セント、一ドルを金二二七・〇五円で計算)を下らない年収を得ていたものであること、原告は、右後遺症により、本件事故前に有していた労働能力の五パーセントを喪失したもので、その喪失期間は本件事故後一四年間であることが認められる。よつて、右労働能力喪失による損害額を、右収入を基礎として、ライプニツツ式計算方法に従つて算出すると、金七五万〇、二五二円(円未満切捨 1,515,876円×0.05×9.8986=750,252円50銭)となる。

(二)  年金

次に、原告は、本件事故によりエイフエスに就労することができなくなつたため、年金を将来受給する資格を喪失したとして、これに基づく損害を請求する旨主張するけれども、前記認定のとおり、原告がエイフエスに就労し得なかつたのは、本件事故とは関係のない別個の事情に基づくものであるから、この点に関する原告の右主張も、その余の点につき判断するまでもなく、失当としてこれを採用することができない。

2  慰藉料金七〇万円

前掲各証拠によつて認められる本件事故の態様・程度、原告の受傷の部位・程度、後遺障害の有無・程度、通院治療の経緯および本件事故の前記寄与度等諸般の事情を総合して考えると、被告らの賠償すべき慰藉料は金七〇万円をもつて相当と認める。

3  治療費および通院交通費金四万七、九六〇円

原告は、前記二1のとおり、U・S病院および東京衛生病院で通院治療を受けたが、前掲各証拠によると、原告は、右両病院への治療費として金九万二、〇〇〇円を支出したほか、東京衛生病院への通院交通費として金三、九二〇円計金九万五、九二〇円を要したことが認められるところ、本件事故の前記寄与度を参酌して、右金員の五〇パーセントに当る金四万七、九六〇円を被告らの賠償額と認める。

4  弁護士費用金五万円

成立に争いのない甲第二二号証および原告本人尋問(第一回)の結果によれば、被告らは、本件損害賠償請求に関し、任意の弁済に応じなかつたので、原告は、やむなく、本訴の提起と追行を原告代理人に委任し、同代理人に対し、昭和五二年八月二七日着手金五〇万円を支払い、かつ報酬として訴額の一割を支払うことを約したことが認められるが、本件事案の難易、損害認容額等に鑑み、弁護士費用は金五万円が相当であると認める。

四  損害の填補

被告らが原告に対し、保険金から治療費金四万四、一〇〇円、昭和五一年六月一日から同年一二月一五日までの休業損害金一一〇万三、八二四円計金一一四万七、九二四円を支払つたことはいずれも当事者間に争いがないので、原告の損害額計金一五四万八、二一二円から右金一一四万七、九二四円を控除すると、残額は金四〇万〇、二八八円となる。

五  よつて、原告の被告らに対する本訴請求中、右金四〇万〇、二八八円およびこれに対する本訴送達日の翌日である昭和五二年一一月一三日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の各自支払いを求める部分は理由があるからこれを認容するが、その余の部分は失当としてこれを棄却すべく、民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文、一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 松本朝光)

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